2021年9月30日。
全国に発出されていた緊急事態宣言がようやく解除された。
これまでの日々を忘れないよう記憶に留めておきたいと思う。
何もかもが異例で感染者が増える度に怯えていた2020年。マスクだけではない息苦しさをずっと抱いていた。
2021年は昨年と異なり”緊急事態”と”日常”が同化する感覚がしていた。
緊急事態と言いながら、朝起きて電車に乗り、会社で仕事をして夜に帰宅する。週末にはアルビレックスの試合が開催される。でも、試合をみる場所はスタジアムではなく、自宅からの画面越しだった。
私は関東に住んでいるが、近隣のスタジアムは夏以降、アウェー席の設置がなかった。実際に東京ヴェルディ戦やFC町田ゼルビア戦が行われたスタジアムは会社より近い。しかし、緊急事態宣言が発出されている状況下では2年連続でオレンジのユニフォームに袖を通すことは許されなかった。
日々を重ねていくうちに、私の中でスタジアム観戦は日常ではなく、”非日常”になりつつあった。もちろん関東にお住まいの方の中には、自宅近くで開催されたアルビレックスの試合に足を運んだ方もいるだろう。ここでコロナ禍でサッカー観戦をする時に何が良くて何がダメなのかを議論するつもりはない。
この新型コロナウイルスによって少しずつ、でも確実に、新潟やアルビレックスとの精神的な距離は遠くなっていった。今までは関東に住んでいても、いや、全国どこに住んでいても、頑張ればアルビレックスの応援に行けた。だが、このような状況下ではお金と時間だけでは越えられない問題がある。コロナ禍と呼ばれる特殊な環境が私たちをそれぞれの住む街に縛り付けた。
スタジアム観戦だけが欠落する日々。何が日常生活なのか分からなくなる。そんな中で、スタジアムに行けなくても、新潟に行けなくても、アルビレックスは私と新潟を繋いでくれた。スタジアムに行けない時間も、サポーターの友人たちはアルビレックスを通して今まで通りの言葉が私を救われた。
今、この時を一緒に共有できる。
嬉しいことがあれば報告してくれる。
楽しい時に電話をくれる。
しんどい時にはLINEをくれる。
サポーターの間柄すら超えて、私と一緒にいてくれる。
本当はもっとスタジアムに行きたい。選手と一緒に戦いたい。手が真っ赤になって痛いくらいに拍手を送りたい。選手やサポーターのみんなと同じ気温を、天候を、スタジアムの空気を感じたい。ビッグスワンの美しい屋根に切り取られた新潟の空を見上げたい。
新潟に行けない時間も、友人たちと会えない時間も今までで一番長くなってしまった。その間、アルビレックスが私と新潟を繋いでくれた。嬉しいことも苦しいこともあるけれど、アルビレックスがいつも前に進む力をくれた。
今、クラブは苦しい状況にいる。でも何も終わっていない。
昨年の10月は色々なことが起きてクラブがバラバラになる危機を迎えていた。
でも今年は嬉しいも苦しいも悔しいも選手と共有し合えてる。ならば信じよう。このクラブを、全力で戦い続ける選手たちを。
スタジアムに行ければ想いを熱を拍手で選手に届ける。
画面越しなら懸命に戦う選手とサポーターの想いに寄せる。
選手も私たちもフロントのスタッフもみんな”アイシテルニイガタ”だ。
できることは限られている。2位の背中は決して大きくない。追い越せるかどうか、誰にも分からない。
今週末、ようやくビッグスワンに帰れる。半年振りの新潟だ。
残り10試合、後悔がないようにこの日々を心に刻んていきたい。