10月。
毎試合、アルビレックスが試合を行うスタジアムには、かつてないほどのメディアが集まっていた。
彼らが写真や映像に収め焼き付けようとしていたのは私たちの勝利ではなく、
私たちが涙を浮かべ、ただただピッチを見つめる姿だったのではないかと思う。
私たちの降格が決まる瞬間を今か今かと待ちわびているようにさえ思えた。
が、当初は降格が決まると思われていたガンバ大阪戦で17試合ぶりの勝利を手にし、磐田戦での引き分けにより、辛うじて降格を免れてビッグスワンに戻ってきた。
みんな万が一の時を覚悟して来ている。
しかしスタジアムに悲壮感はなかった。
私が住んでいるのは関東なので新潟県内と異なり、アルビレックスに関するニュースが自然に届くことはまずない。
そんな関東でさえ、全国版のニュースでもアルビレックスの降格危機が取り上げられると、周囲から騒がれてるようになった。
「新潟大丈夫?」
と言う心配の声もあったし、
「降格するのは時間の問題だね」
と言う冷ややかな声もあった。
しかし私はすぐに、
「もう全身火だるま状態ですよ。でも諦めてませんから。」と一蹴した。
私にも悲壮感はなかった。
ダントツ最下位、
次負ければ降格。
言葉だけを並べると絶望しかないのかも知れない。
でも、ガンバ大阪戦から毎試合、素晴らしい試合を重ねていることを知っている。
鳥栖戦はベストゲームと言って良いのではないだろうか。
前線からのプレスと素早い切り替えで鳥栖を攻め立てた。
セットプレーの流れから慶のミドルシュートで先制。
守っては大谷の幾度もの好セーブによって、ウノゼロで5ヶ月振りのホーム勝利を手繰り寄せた。
選手とサポーターが呼応し合って一体感が増している。
何よりもわくわくする楽しいサッカーを魅せてくれているのだ。
今の状況が7ヶ月間の不調によって縛られているのは間違いない。
鳥栖戦に勝利しても降格の可能性はあった。
この現実を否定するつもりもない。
勝負の世界で、このカテゴリーで、1番勝てていないのだ。
その順位によって道が違えることも知っている。
それでも、私たちはこの2017年のシーズンを見届ける覚悟だ。
第32節は14:00キックオフの試合から運命の針が回り始める。
そして、アルビレックスの試合が終わった時には何かが決まってしまう可能性もある。
周囲にはお尻に火がつくどころか、全身火だるま状態になって悪あがきをしているように見えるのかも知れない。
それでも白鳥の誇りは決して揺るがない。
選手達がアルビレックスの誇りを懸けて闘ってくれるのなら、私も最大の後押しでその想いに応えよう。