マチココロ

サッカー観戦と本業のお掃除、新潟のよいところを綴っています。

アルビレックス新潟

私たちが愛してやまない”新潟の太陽”

「王様になれるチームじゃないと活きない」
高木善朗が前に所属したチームのサポーターが言っていた言葉だ。
でも私たちにとって善朗は”新潟の王様”ではない。
私たちの心を照らし続けてくれる、私たちが愛してやまない”新潟の太陽”なんだ。

2018年、高木善朗はアルビレックス新潟に加入した。私にとって善朗は上手い選手ではあると思っていたものの、思い入れのある選手ではなかった。

善朗が加入してからの2年間は、アルビレックス新潟にとって自信や誇りをベキベキと折られ続けた期間だった。1年でのJ1昇格を目指しながらも、早々に昇格の可能性が消滅していた。目標も失い、クラブがどこに向かっているのか分からない日々。今思い出しても苦しくなる。
この2年間で所属していた多くの選手がクラブを去った。個人でのJ1昇格を果たす選手も多く、引き留めは困難だったのだろう。そんな中、善朗は残ってくれた。
2020年にアルベル監督(現FC東京監督)が就任してからはボールを保持するスペインスタイルのサッカーとなり、戦術が練り上げられ、完成度が高まっていく過程で善朗の存在は輝きを増していった。
アルビレックス新潟への加入前から、周囲が羨むようなセンスと技術を持ち合わせながら、周囲を活かしきれない、自分も活かしてもらえなかった善朗。彼がアルビレックスで絶対的な存在となった瞬間だった。

パスがピッチを縫ってゴールへと向かっていくのが分かる。こんなワクワクするサッカーをアルビレックスで見れるなんてと感動した。アルビレックスのスタイルを確立できず、バラバラになりそうだった時期が嘘のようだった。

いつの頃だっただろう。一緒に試合を重ねていくうちに、年月を重ねていくうちに、善朗は私たちの想いに応えてくれるようになった。アルビレックスへの愛を、この新潟という街への愛を発信してくれるようになった。

2022年の9月10日のFC琉球戦。善朗は2得点の大活躍だった。ビッグスワンでコロナ禍以来となる声出し応援の試合だった。
私も2年半振りにスタジアムで善朗のチャントを歌った。

「みなさん応援ありがとうございました。大好きなこの街と大好きなこのクラブをJ1に上げるために全力で戦うので応援よろしくお願いします!」
試合後のヒーローインタビューで善朗は私たちにこう伝えてくれた。嬉しくて堪らなかった。2018年に降格してから5年目。ようやくJ 1昇格が手の届きそうなところまで来た。だからこそ善朗がみんなと今シーズンを走りきって、待っていた瞬間をピッチとスタンドで、一緒に喜び合えると信じて疑っていなかった。

2022年9月18日水戸ホーリーホック戦。
善朗がピッチに倒れ込む。
J2の中でも被ファウル数が誰よりも多かった善朗。ファウルを受けながらもその度に立ち上がって来た。肝を冷やしたのは一度や二度ではない。
ファウルを受けたシーンのハイライトを見て、彼の表情や雰囲気、周囲の反応からプレーを続行できる怪我ではないことは明らかだった。善朗は立ち上がれずに慎重に担架へ乗せられ、そのまま裏へ運ばれて行った。
試合は2-0で勝利。救急車での搬送に至らず、勝ちフォトでもその姿を確認し、少しの安堵を得たのも束の間、クラブからの公式発表がリリースされた。

右膝前十字靱帯損傷。全治の発表はなかったが、手術が必要であること、ピッチに再び立つまでに数ヶ月要することは容易に想像がついた。
長くサポーターをやっていると、残念ながらこういった選手の長期離脱の場面に立ち会ってしまうことはある。目を覆いたくなるようなシーンも目にして来た。でも、善朗の怪我は、一番苦しい時期を一緒に乗り越えて来た今だからこそ、私も辛かった。
仕事の休憩中に怪我に関するリリースを見て涙を堪えながらも、帰宅してからモバアルを見て、我慢できなかった。1人の選手の怪我で泣いたのは初めてだったかも知れない。

2022年9月25日の大宮アルディージャ前では善朗の想いを聞こうとたくさんのサポーターが駆けつけた。

スタジアムに響く善明のチャント、善朗のコール。目頭を押さえて俯く彼の姿を見て、涙を滲ませたサポーターは多かったに違いない。

今シーズンはキャンプ前と5月にはコロナウイルスの感染者が続出した。キャンプを十分にできないまま開幕を迎えたし、5月の超過密日程の中でぎりぎりの選手起用を強いられた。至恩の移籍と怪我人の続出の時期も重なった。試合が開催されるのかシーズンを走り切れるのか不安を抱えたまま、ここまで走ってきた。
それでも危機を迎える度にみんなで乗り越えて来た。その中心にはもちろん善朗がいた。

善朗は知らないだろう。苦しい時に新潟へ来てくれて一緒に戦い続けてくれた善朗に、どれだけ救われていたか。
エンブレムを叩いてスタンドにいるサポーターへ真っ直ぐに向けられたその眼差しに、どれだけ心が震えていたか。

今の善朗は広い視野と類稀なるセンスと技術で周りを活かすだけではない。どんなにファールを受けても立ち上がり続け、労を惜しまずピッチを駆け回る。献身的なプレーを続けることで自分も周囲に生かされている。そして明るいキャラクターでサポーターを魅了し、熱い想いでサポーターに応え続ける。
私たちにとって善朗は”王様”ではない。
私たちの心を照らし続けてくれる、私たちが愛してやまない”新潟の太陽”なんだ。

私たちは善朗がアルビレックスの「33」のユニフォームを身に纏い、スタジアムに戻ってくるのをずっと待っている。
アイシテルヨシアキ。

Special thanks
みゆき(@17miyuki)さん※H琉球戦・H大宮戦
友人のKさん※昨年のA大宮戦
写真をお貸しくださってありがとうございました!




-アルビレックス新潟

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マチ神奈川県川崎市在住、東京都調布市出身。
新潟に無縁だったアルビレックス新潟サポーター16年目、家事代行会社入社8年目。
サッカー観戦、本職のお掃除、サポーターとして経験したこと、新潟のよいところを書いてます。