-2度のリードも実らず、13戦勝利なしの苦境-
2025年9月27日、J1リーグ第32節のガンバ大阪戦。2度のリードがありながら、最終的に2-4で逆転負けを喫し、13試合連続で勝利なしという厳しい現実を突きつけられた。
樹森監督解任と入江新体制のスタート
話を少し過去に戻そう。
2025年6月23日、樹森監督の契約解除と後任として入江徹コーチが監督に就任することが発表された。
トップチーム #樹森大介 監督 契約解除をお知らせいたします。
なお、後任には #入江徹 コーチが就任し、本日より指揮を執っていますので、あわせてお知らせいたします。https://t.co/7hjvpuTUQq #albirex #アルビレックス新潟— アルビレックス新潟 (@albirex_pr) June 23, 2025
私個人としては、樹森監督と最後まで共に戦い抜く覚悟を決めていたタイミングだった。だからこそ、この監督交代に戸惑いを隠せないまま、入江新体制がスタートした。
苛烈な夏の移籍とチームの「再構築」
試合が積み重なっていく一方で、夏の移籍期間はサポーターにとって「苛烈」なものとなった。
退団選手
DF 稲村 隼翔(セルティックFC)
MF 宮本 英治(岡山)
MF 小見 洋太(柏)
MF 太田 修介(湘南)
FW 矢村 健(藤枝)
MF 秋山 裕紀(SVダルムシュタット98/レンタル)
MF 落合 陸(大分/レンタル)
加入選手
DF 舩木 翔(C大阪)
MF 白井 永地(柏)
MF 島村 拓弥(柏/レンタル)
DF 植村 洋斗(磐田/レンタル)
MF 小原 基樹(広島/レンタル)
FW マテウス モラエス(マリンガFC)
FW アブデルラフマン・ブーダ・サイディ(ハンマルビー)
さらに、長期離脱選手も発生した。
MF 星 雄次(右膝前十字靱帯損傷/全治約8ヶ月)
MF ダニーロ ゴメス(右膝前十字靭帯損傷など/全治8~10ヶ月)
選手14名が入れ替わり、2名が長期離脱。シーズン後半戦という重要な時期に、「新しいチーム」に生まれ変わらざるを得ない状況に追い込まれた。
夏の連戦では、これまでできていた「相手を見ながら繋いで剥がす」「全員でパスを繋いで前進する」といったサッカーが機能しなくなった。リスクを負ったハイラインからの失点や、ミスからの失点が絶えず、勝ち星は遠い。
「どんなサッカーをしたいのか」も見えず、ただただ負けるのを見届ける日々は、本当に苦しくて堪らなかった。
-危機感が生んだ異様な光景と監督という仕事-
6ポイントマッチの敗戦とサポーターの行動
2025年9月20日、J1リーグ第30節の横浜FC戦では、同じ降格圏に沈む相手に敗戦し、いわゆる「6ポイントマッチ」を落とした。
試合後、サポーターから選手へ10分近く声を掛ける場面があった。中心部と選手を見守る異様な雰囲気がアウェイゴール裏を包み込んだ。
現在、アルビレックス新潟は明治安田J1リーグ第30節を終え、勝点20で最下位に沈んでいます。
この厳しい現実を、フロントスタッフ・チームスタッフ・選手、クラブに関わる全員が真しに受け止めています。… pic.twitter.com/HNwvwrLQj3
— アルビレックス新潟 (@albirex_pr) September 22, 2025
にもかかわらず、サポーターも選手も強い危機感を持って臨んだ翌第31節の名古屋戦、そして第32節のG大阪戦でも、勝利を掴むことはできなかった。
ブーダをスタメンから外すことで、全員がブーダに依存する現象からは脱却。ゼロトップのような形で前進し、得点も挙げられるようにはなってきた。しかし、トランジションの差で守備が間に合わず失点。私たちの隙を見逃してくれるほど、J1の舞台は甘くないと痛感する試合が続いている。
会社員の視点から考える「監督業」の難しさ
ここで絶望の言葉を並べても希望は見えてこない。ネガティブな話はこのくらいにして、ちょっと視点を変えてみよう。会社員として働く私が、「監督」という特殊な職業について掘り下げて考えてみる。
監督の主な仕事は以下だと思う。
・戦術の立案と実行
・選手育成・指導
・試合中の采配
・情報収集・分析
・チームマネジメント
私自身、会社員としてマネジメントをする立場になって暫くが経つが、監督という職業と唯一違うのが、「自分がプレイヤーとして現場に入るかどうか」だと思っている。
会社員の私はプレイングマネージャーとして動くことも多く、人手が足りなければ手を動かす業務に従事することも度々ある。しかし、サッカーの監督は、自分が穴埋めをすることはできない。あくまで、個性豊かな選手たちのベクトルを合わせ、最大限の力を発揮してもらえるようにマネジメントしなければならないのだ。
「相手を見て繋ぐサッカー」の難しさと信頼関係
これだけ多くの選手が入れ替わってしまった状況である。新加入選手たちの特性を把握するだけでも相当なボリュームだろうし、一人ひとりのアプローチ方法を掴むには、本来、時間を要するものだ。
何よりも、自分の言葉通りに選手を動かすには監督と選手間の「信頼関係」が不可欠なはずだ。サッカーは目まぐるしく局面が変わるため、局面ごとに監督が手取り足取り指示を出すことはできない。選手それぞれの判断に委ねられ、その判断の連続が得点や失点に繋がる。
「こういう場面ではこう動く」という原則をチームに浸透させるのに、どれほどの時間が必要なのだろうか。短期間で形にしようとしたら、戦術をシンプルにするしかない。だからこそ、試合を通して統一感が見えなかったり、一時的にブーダ頼みになってしまったりしたのではないか、と推測してしまう。
アルビレックスが大切にしてきた「相手を見て繋ぐサッカー」は、構築に時間がかかるものである。だからこそ、慣れている選手や、前のクラブで同じくポゼッションサッカーに取り組んでいた選手が起用されるのは、当然の選択とも言える。
監督への敬意とフロントへの問いかけ
マネジメントの難しさは、経験したことがない人ほど理解が及びにくいものだ。正しいと思って判断をしても、実際に動く人間が納得感がなければ動いてはくれない。
そして、マネジメントの難しさをさらに加速させるのが、結果とメンタルの密接な関係だ。サッカーはメンタルの状態が結果に直結しやすい。13試合も勝利から遠ざかっている状況では、選手たちは自信を失い、判断に一瞬の迷いが生じるのは当然だ。選手一人ひとりのパフォーマンスを最大限発揮するのは難しく、チーム全体のベクトルも合わせにくくなる。このような苦境だからこそ、監督の役割が際立ち、その存在がチームにとって非常に重要になってくるのだ。
その中で、入江さんはあの難しい状況で監督を引き受けてくれた人だ。誰がやっても困難なタイミング、状況で、このクラブへの愛情と覚悟を持って引き受けてくれたのは間違いない。初めての監督業で、うまくいかないことがあるのも理解できる。
しかし、残念ながら、その失敗を擁護できないほど、クラブは危機的状況に追い込まれている。サッカークラブの監督は、いつ首を切られるか分からない状況の中、何万人もの期待を背負い、様々な重圧に耐えてチームをマネジメントしなければならない。このチーム状況の中では、全ての情報が聞こえてくるわけではない中で、あることないことの噂も流れ出す。失敗できない状況が、どんどん監督を追い込んでしまったのではないかと思ってしまう。
私だって散々失敗を重ねてきたが、その失敗を成長に繋げて来られたからこそ今の私がいる。これは結局、「失敗が許される環境だったのかどうか」ということに尽きるのではないか。
たくさんの分岐点があった中で、チームとして失敗を重ねてしまった。これは一人の監督だけに背負わせるべき問題ではない。この苦しいシーズンを走り抜いたその先で、クラブのフロントにはしっかり考えてほしいと強く願う。
共に泥舟で大海を渡りきる
残りは7試合。
この状況、このチームとどう向き合っていくのかは人それぞれだ。見ているのが辛い人は、一時的に離れても良い。
だが、私は最後までこのシーズンを見届ける覚悟でいる。
