マチココロ

サッカー観戦と本業のお掃除、新潟のよいところを綴っています。

アルビレックス新潟

正味こっからでしょ新潟

「そう何度も国立で負けてられっかよ」
そびえ立つ国立競技場を睨みつけながら、私は小さく呟いた。

2025年4月6日J1リーグ第9節。
この日はThe 国立 Dayと銘打たれ、関東圏でないチームも国立競技場でホームゲームを開催する。

J1に昇格して以来、私たちは国立競技場でのアウェーゲームに毎年招かれていた。2023年の名古屋戦、2024年度のFC東京戦、そして2025年はヴィッセル神戸戦。
アルビレックスは新旧の国立競技場でいずれも勝利がない。さらに集客も見込める。The 国立 Dayを成功させるには格好の相手だったのだろう。
分かってはいても、「今年こそは」と意気込んで参戦し、結局は悔しさを滲ませて帰宅する。その繰り返しだった。

今シーズンは樹森新監督の下、昨年までのサッカーをベースにレベルアップを図ってきた。しかし、何度も目の前で勝利を逃し、開幕からリーグ戦8試合未勝利のまま、The 国立 Dayを迎えていた。

冒頭の呟きに戻るが、私の脳裏にはまだ2024年11月2日の光景が鮮明に残っていた。
国立競技場の周辺で人々が賑わう様子も、階段を登った先に広がる小雨混じりの景色もついこの間見たように感じられた。

この試合はリーグ戦の中の1試合であり、この試合で勝って得られるのは勝ち点3、それ以上でもそれ以下でもない。

それでも、あの日に届かなかった勝利をみんなで掴み取りたかった。悔しくて、悔しくて、声を上げて泣いたあの日を乗り越えたかった。だから、とにかく精一杯の声援と拍手を送ろうと心に決めた。

序盤から、一瞬でも気を抜けば失点しそうな、張り詰めた展開が続く。

そんな中、アルビレックスの選手たちの奮起から生まれたショートカウンター。長谷川元希が放った一閃は、反対側のゴールにも関わらず、「これは入る」という確信を持てるほど美しい軌道を描いた。

前半12分。
アルビレックスが均衡を破り、一歩前に出る。

そこからは、一瞬たりとも気が抜けなかった。「いやぁ、うまいな」と、何度神戸の選手のプレーに唸ったことか分からない。
プレスをかけているのに軽々と躱されたり、苦し紛れに出したと思ったパスも味方選手に危なげなく繋がったりと、昨年の王者たる所以を見せつけられるプレーが続出した。

個の力で勝る神戸に対し、チーム力でギリギリのところで耐える新潟。
ハイライトで振り返れば「なぜあれが枠に入らなかったのか」と思うようなシーンも、元日本代表のオールスターのような選手を擁する神戸を前にすると、一つ一つのセットプレーさえも息を飲む展開となり、試合中はずっと重圧に押し潰されそうだった。

連戦による相手の疲労にも助けられ、少しずつ、しかし確実に時計の針が進んでいく。

昨年の湘南戦の後、私たちは長いトンネルの中にいた。
ルヴァン杯では、あと一歩のところで優勝を逃し、その後の残留争いも長く苦しいものだった。辛うじて最終節を引き分けで終え、残留を決めて臨んだ今シーズン。

樹森監督が目指すサッカーがなかなか見えず、不安に駆られたこともあった。
大切に積み上げてきたものが壊れてしまったのではないかと絶望した試合もあった。
監督の経験値の差を感じた試合もあった。

それでも、少しずつ、本当に少しずつ、チームは積み重ねていき、良い兆しも見えるようになっていった。

目覚ましい成長を見せる藤田くん。
ルーキーとは思えない堂々としたプレーを見せるいなむぅ。
まさに鉄人のようにピッチを駆け回る奏哉さん。
まだまだ進化が止まらない星くん。
攻守の要であり続けるマイケル。
絶好調で、キレのあるプレーを連発するハセモ。
何度だって私たちを驚かせてくれるヤムケン。
抜群の安定感でチームを支えるおのゆ。
そして、どんな時でも頼れるキャプテン、ゴメス。

あとほんの少しのところで、どうしても勝てない。
苦しくて、苦しくて、もがいてもがいて。

国立競技場で、選手も、スタッフも、サポーターも、確かに一つになっていた。

試合終了のホイッスルを聞いた瞬間、私は思わず顔を覆った。
そこにあったのは、ずっとずっと手が届かなかった、待ち焦がれた勝利だった。

様々な感情が溢れ出し、気がつけばボロボロと涙が頬を伝っていった。

2024年11月2日とは違う、喜びの涙だった。
203日ぶりのリーグ戦でのハルヲスイング。

ようやく、私たちはスタートラインに立てた気がする。

“正味こっからでしょ新潟”




-アルビレックス新潟

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マチ神奈川県川崎市在住、東京都調布市出身。
新潟に無縁だったアルビレックス新潟サポーター16年目、家事代行会社入社8年目。
サッカー観戦、本職のお掃除、サポーターとして経験したこと、新潟のよいところを書いてます。