マチココロ

サッカー観戦と本業のお掃除、新潟のよいところを綴っています。

アルビレックス新潟

I can’t help falling in love with you -2024.11.02-

2024年11月2日 JリーグYBCルヴァンカップ プライムラウンド 決勝。
てっぺんまであと1つ。

対戦相手となる名古屋グランパスは屈強なフィジカルで相手を跳ね飛ばし、鋭いカウンターで切り裂く堅守速攻のチームだ。
9月の対戦時は本当に何もやらせてもらえずに0-3で完敗した。現地での試合後の虚無感はまだ鮮明に覚えている。
正直、相性は悪い。個人的には決勝で戦いたくない相手だった。

お互いのスタイルのぶつかり合い。一瞬でも怯んだらそこでやられる。
そんな緊張感があった。

国立競技場を周回してエスカレーターを登り、南側2層から見えた景色はスタンドがオレンジと赤ですでに染め上がっていた。
境界線は分からない。今にも雨が降り出しそうな曇天の中でスタンドが炎のようにキラキラと輝いて見えた。

選手がピッチに登場すると1層目から3層目まで地鳴りのようなアルビレックスコールが響き渡る。
思わず応援したくなるような雰囲気、みんな身を乗り出して選手を後押しする。

試合の時間が近づくと、アルビレックスのゴール裏にコレオグラフィーとビッグフラッグが出現。
スタジアムにエルビスだけが響く時間が数分間続いた。

Take my hand,
Take my whole life, too
For I can’t help falling in love with you

ビッグフラッグが回収された瞬間に見えたのは名古屋グランパスのコレオグラフィーとスタジアムに駆けつけた満員のサポーター。
その光景に私は鳥肌が立った。

国歌斉唱からのキックオフ。
試合開始直後からお互いのストロングを出し合う展開になった。
強烈なプレスで圧力をかけるグランパスと、そのプレスを躱しながら最終ラインから自分たちのサッカーを作っていくアルビレックス。

その光景から自然にアルビレックスのゴール裏から歓声が上がる。
そうだ、これがアルビレックスのサッカーだ。

声援とシンクロして前進していくような感覚。
自分たちのサッカーをこの国立で体現できていることに喜びを感じた。

31分にアルビレックスは阿部からのビルドアップでミスが出たところを永井に掻っ攫われて失点してしまう。
そのミスは一瞬だったがグランパスは見逃してくれなかった。

42分にも崩されてしまい前半を2-0で折り返す。

この時点で私は9月に開催されたリーグ戦の名古屋戦の再来かと思った。先制されてからの時間帯はほとんど良い攻撃が出せなかった。
私はずっと溺れている感覚だった。苦しい、苦しい、苦しい。

ハーフタイムに入ると私は数分間目を瞑った。
前掛かりになったところを仕留められたら終わりだ。でも、それに恐怖して勝負ができなかったら私たちは絶対に勝てない。
もう一度、強い気持ちで戦わないといけない。
ここで絶望したら豊田スタジアムの試合と一緒だ。
まだ終わっていない、もう一度やってやろう。そんな気持ちだった。

溺れている感覚は後半に入ってからも続く。良い形で攻撃ができない。額からは汗が伝っているのに緊張から手先・足先が冷たくなるのを感じる。

松橋監督がカードを切った。
65分に宮本、太田、長谷川元希を下げて、ダニーロ、星、長倉を投入。

そこから攻撃が活性化されて、71分についにランゲラックが鍵をかけていたゴールをこじ開ける。

ダニーロが粘ってクロスからの谷口のヘッドでついに1点差。
オレンジのゴール裏から地面から沸き立つような歓声が上がる。

谷口の魂の一発に私は涙腺が崩壊した。
先制直後の72分には谷口と小野裕二に代えて、奥村、小見をピッチへ。ここで松橋監督が全てのカードを切り終えて勝負に出る。

もう1点が出ないまま迎えた後半ロスタイム。ラスト1プレーかというところで、VARが介入する。
続くVARチェック。
私はずっと祈っていた。

「お願いします…お願いします…!」

誰に祈っていたのかなんて分からない。
だけど、祈らずにはいられなかった。
どうか、どうか選手達が報われてほしい。

OFRが入り、福島主審が映像をチェックする。
何度も、何度も映像を確認している間、緊張で周りの音が聞こえづらくなる。

PKでなければ即試合終了の可能性もあった中で福島主審はペナルティースポットを指した。後半終了直前のPK。
緊張で立っていられなくなり、椅子に体を預ける。

PKをセットするまでの間、祈りながら大きく深呼吸をした。

ゆっくりと目を開けて、人と人の間からキッカーを確認すると、ペナルティースポットに入ったのは小見だった。

小見のPKを見るのは初めて。
アルビレックスサポーターの誰もが固唾を飲んで見守った。

90+11分(ロスタイムは6分だった)PKは無事に成功し、私は思わず泣きながら夫の体に顔を埋めた。
必死にもがいて、後半終了間際に何とかグランパスに追いついた。

何とかすがり付いて延長戦に突入したのもつかの間、グランパスにまたしても一歩抜け出されてしまう。

まただ。どうしてまた勝ち越されてしまうのか。
やっと追いつけたのに。
私の中で溺れそうな感覚が蘇る。

でも、ここで諦める訳にいかない。
良い試合だったねと終わらせることなんてできない。
だって私たちはてっぺんを獲るためにここに来たのだから。

選手の頑張りに呼応するように、アルビレックスのゴール裏のボルテージは上がり続けた。

そして、110分に藤原から長倉、長倉から小見へ出したパスで、小見がランゲラックとの1対1を沈め、再び同点に追いつく。

私は感情が爆発して、涙でぐしゃぐしゃになり、小見のチャントも涙声で上ずった。
そこから一進一退の攻防が続くが、両者共にあと1点が出ず試合はPK戦へ。

アルビレックスはコーチ・スタッフ・監督・選手全員で円陣を組んで臨んだ。
私は震える手で祈っていた。

アルビレックスは秋山・デン・星・小見が決めたものの、長倉が失敗。
グランパスが全員決め、優勝を決めた。

私は人目も憚らず声を上げて泣いた。
涙はボロボロとこぼれて止まらなかった。アルビレックスコールもありがとうの言葉も上手く言えなかった。
スタジアムでこんなに泣いたのは人生で初めてだった。

笑顔で盾を受け取るゴメスを見て、涙が止まらなかった。
わんわんと子どものように泣く長倉を見て、余計に涙が止まらなかった。

アルビレックスのスタイルを決勝の舞台で証明できた。
でも、準優勝じゃ記録に残らない。
想いを繋いで来てくれた方々のためにもてっぺんを獲りたかった。
頑張って戦い抜いてくれた選手たちが報われて欲しかった。

どうか、どうか。
そう願っても、てっぺんには届かなかった。

私は名古屋グランパスの選手達がカップを掲げた時のアルビレックスの選手達の後ろ姿を忘れないだろう。

てっぺんには届かなかったけど、私はアルビレックスを愛さずにはいられないから。
これからも一緒に戦い続けよう。

そして次こそは、てっぺんで”みんな”で嬉し涙を流そう。

追記
全体を通して、名古屋グランパスは試合巧者でした。
試合開始前の選手紹介での雰囲気作り(選手紹介の時間を短縮して決勝に向けたハイライト映像・コール&レスポンスを入れてきていた)、コレオグラフィーのタイミング、監督の采配、ランゲラックのPK戦での空気の作り方。
経験が随所に見える戦いぶりに私は唸るしかありませんでした。
カード0枚でスポーツマンシップに則った、お互いのストロングを出し合うエキサイティングな試合に心を動かされた人も多いはずです。
名古屋グランパスの選手・監督・スタッフ・スポンサー、そしてファンサポーターの皆様、ルヴァンカップ優勝おめでとうございました。




-アルビレックス新潟

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マチ神奈川県川崎市在住、東京都調布市出身。
新潟に無縁だったアルビレックス新潟サポーター16年目、家事代行会社入社8年目。
サッカー観戦、本職のお掃除、サポーターとして経験したこと、新潟のよいところを書いてます。