2019年11月23日。
J2リーグ最終戦。
もつれにもつれた残留争いにも、混戦を極めた昇格争いに絡むこともなく、私たちの2019年は静かに幕を閉じた。
走れ!ニイガタ流儀を掲げて始まった今シーズン。
ノザやヨンチョルが新潟に帰ってきてくれて、アルビレックスの原点を回帰しようとしたシーズンだった。
しかし思うような結果を出せず、9節(3勝3分3敗)終了時点での片渕さん監督の交代。
吉永さん就任後も春と夏に連敗を重ねてしまう。
5/11(土)長崎戦 2-3●
5/18(土)愛媛戦 2-3●
5/25(土)琉球戦 1-2●
6/1(土)甲府戦 0-2●
8/11(土)山形戦 0-2●
8/17(土)岡山戦 0-3●
8/24(土)金沢戦 2-3●
マイケルが帰ってきてくれて、史哉がピッチに戻ってきた秋。
徐々に歯車が噛み合い勝点を積み上げているものの、なかなか順位を上げることができない。
そんな日々が続いていた。
2019年9月23日。
片渕さんのホームグロウンコーディネーター退任とサガン鳥栖のコーチ就任が発表される。
#片渕浩一郎 ホームグロウンコーディネーターが退任することとなりました。退任後は #サガン鳥栖 トップチームコーチに就任することとなっています。「新潟の皆さんに恩返しをするためにも、自分らしく一歩ずつ進んでいきたい」とコメントを残しています。https://t.co/ai7iigfVjb #albirex pic.twitter.com/vVLDkXIS3x
— アルビレックス新潟 (@albirex_pr) September 23, 2019
いちサポーターからすれば悲しさより安堵の方が強かった。
本当は現場に身を置きたいであろう片渕さんを、私たちの都合でホームグロウンコーディネーターという職に留まらせてしまっているのではないかと勘ぐってしまうところがあった。
今回、地元であるJ1のサガン鳥栖に引き抜かれ、もう一度現場でチャレンジする機会を掴んだことは今後のキャリアを考えても良かったと思う。
その一方で私たちは共に歩んできた生え抜きの監督を失うことになった。
正確に言えば育てたのか育ったのか。私にはそこすらも分からない。ただ、アルビレックス新潟というクラブにとって、大きな損失になることは間違いないだろう。
アルビレックス新潟は元監督である反町康治さんで成功して以降、選手とともに監督を自分たちで育てようと試みた。
黒崎久志さん・三浦文丈さん、そして片渕さん。
しかし結果としてクラブがその成長を待つことができず、途中解任を繰り返してきた。
片渕さんについてはピンチヒッターのような形で何度もシーズン途中に監督に就任してもらい支えて貰ってきたからこそ、今シーズンの続投については私自身も片渕さんを支えようという強い決意があった。
でも、現実はわずか9節での監督交代。
経営判断としても難しいところがあっただっただろう。
潤沢な資金力を持つクラブであれば別の話だが、残念ながらアルビレックスは何としても昇格を達成させなければならないという財政状況にいた。
あのタイミングでの解任が正しかったのかどうか、今でも分からない。
だからこそ私たちは吉永さんを支えて闘い続けるしかなかった。
新潟らしさというフレーズをアルビレックス新潟を語る上で度々登場する言葉である。
片渕さんに自身新体制の会見でこのように語っていた。
「昨年から申し上げておりますが、新潟のスタイルとはどういうものか。それをピッチで表現したいですし、サポーターのみなさんが応援したいというチームにしたい。応援したい、そう思えるようなゲームを展開したい。エキサイティングで、見ていてわくわくする、ドキドキする、そういうフットボールを、このビッグスワンで展開したいと思っています。」
片渕さんを失ったことで、アルビレックスのサッカーとは、新潟らしさとは何なのか。
もう現場で指し示せる人がいない。
アルビレックスのために尽くしてくれた片渕さんの後ろ姿を見届けながら、未来のアルビレックスを案じる日々が続いていく。
2019年11月3日。
栃木戦で昇格への道が完全に絶たれた。
後半ロスタイム。
失点の瞬間、全てがゆっくりに見えた。
栃木のサポーターが嬉しそうに飛び上がる瞬間も。
マイケルと大武がゴール前で食らいつく。
試合終了の笛が鳴るまで彼らはセンターバックなのに前線に上がりっぱなしだった。
私はきっとこの光景をきっと忘れない。
この試合の意味が1つの勝敗を分かつということではないことをピッチの選手やコーチ陣ははもちろん、白鳥のエンブレムを身に付けたサポーターの誰もが知っていた。
この試合に負ければ、昇格の可能性が消滅する。
焦りが色濃くなる一方で時計の針が何倍も早く進むように感じた。
そして無情に鳴る試合終了のホイッスル。
歓声が上がるホームサイドのスタンド。
試合が終わってからどのくらい経っただろう。
ゴール裏はずっと沈黙だった。
誰も声を出さない。
いや、出せなかった。
光が目の前から消えるような感覚。
私自身降格が決まった試合の時がフラッシュバックした。
涙は出なかった。
福岡戦や栃木戦。
気持ちや覚悟が強いチームを前にプレーの軽さが際立った。
私たちが背負っているものはそんなにも軽いものなのかと悔しかった。
でも、背負っているものが軽かったんじゃない。
私たちが弱かったんだ。
私は悔しくて、選手たちが引き上げるまでずっと唇を噛んでいた。
その間も目は乾いたままだった。
2019年11月17日。
吉永さんの監督の退任とともに新監督就任が発表される。
#アルビレックス新潟 の2020シーズンの指揮官に、アルベルト プッチ オルトネダ監督が就任‼️「情熱と尊敬の心を持って、最高のサッカーをすることをお約束します」と、豊富を語っています。
詳細はこちら➡️https://t.co/mNoubwV8ep
2020シーズンパス継続更新受付中➡️https://t.co/sgYoS2wBO9 #albirex pic.twitter.com/m8mBwEoe3Y— アルビレックス新潟 (@albirex_pr) November 17, 2019
そして最終戦までに雪崩のようにアルビレックスを支えてくれた選手の契約満了も発表された。
ノザ、貴章、ズミさん、ヨンチョル…。
新潟のサッカーを象徴するような、熱くてひたむきで頑張る選手たちだ。
片渕さんの退任。
新監督就任
新潟を象徴する4選手の退団。
これらのリリースから、フロントが覚悟を持ってアルビレックスのサッカーを変えようとしている。
それだけは分かった。
2019年11月23日。
ビッグスワンでの今シーズンのラストゲーム。
退団が発表された4選手のアルビレックスでの最後の試合。
私は悲しくて悲しくて、涙が止まらなかった。
2年前に降格した時でさえ、数週間前に昇格の可能性が消えた時でさえ、涙は出なかったのに。
昇格できない代償を、失うということを、この時身を持って知ったのだと思う。
ともに苦楽をともにした選手たちを、新潟を深く愛している選手たちを自ら追い出しているような苦しさがあった。
消化試合と言っても過言ではない状況。
その中で、一人でも多くアルビレックスに尽くしてくれた選手をピッチに送り出したいと私たちも選手も必死だった。
私たちが昇格していたらきっと、こんな誰もが辛い最終戦を迎えることはなかったし、こんなに悲しい勝利なんてなかっただろう。
去年よりも闘えていると思っていた。
今日よりも勝利を重ねていると思っていた。
しかし実際、私たちは一度も昇格争いに絡むことなく、静かに目標を失った。
時期はともかく結果は同じ。
昇格は劇的な展開の先に待っていると思っていた。
でも実際は現実の中にしか昇格は存在しなかった。
運だけでは上がれないんだ。
ラッキーが42試合も続くわけがない。
1試合の積み重ねが順位になって、1試合の甘さが順位に表れる。
この2年で嫌というほど思い知らされた。
最終戦後も達也や長年支えてくれたコーチ陣の退団が発表される。
今結果を残さないと、クラブがなくなってしまうと怖くなったこともある。
でも結局、結果を求め過ぎて全てを捨て去り、何も残らなかった。
私たちは積木くずしのように何年も積み重ねては自分たちで壊してきた。
そして迷子になり、過去のアルビレックスを知る選手たちに集まってもらった。
それでも昇格は叶わなかった。
おとぎ話、新潟らしさをという見えないものにすがるのではなく、新しいアルビレックスを、アルビレックスのサッカーを作っていく転換期なのかもしれない。
クラブは良い方向に変わろうとしている。
ビッグスワンに活気が戻ってきている。
勝敗に終始せず楽しめる空間になりつつある。
アルビレックスのサッカーは、想いを託された監督が、ピッチで闘ってくれる選手たちが、そして私たちサポーターが作っていく。
過去を振り返るのではなく、未来を見て歩んでいきたい。
だからこそ、私たちは変わらければならない。
強い覚悟を持って、闘い抜かなければならない。
この涙を来年の糧にするために。
今年積み上げたものを来年に活かすために。
また来年、スタジアムで共に闘おう。